2008年08月20日

各公演の観どころ・聴きどころ

現在カルチャースクールで、オペラを中心にクラシック音楽について講演もされている音楽評論家の松本矩典さんに、「ソフィア国立歌劇場」やその来日公演の演目にかかわるお話を聴いてみました。


「声の王国ブルガリアよりの使者」
1970年頃のことですが、ブルガリアのソフィア放送合唱団が初来日して、当時私が所属していたビクターで録音することになったとき、その生の声に接してまず驚きました。それまでに聴いたこともない声の厚み、美しい響き、低音域の豊かさ。これらがマイクで収録できるのだろうかと・・・。それ以来、“ブルガリアの声”に対する畏敬の念は続いています。

 その後、個人的に接したブルガリア出身の名歌手は、巨星のニコライ・ギャウロフ(Bs)、「トスカ」歌いとして一時代を築き、1973年のイタリア歌劇団来日で見事実証してみせた名花ライナ・カバイヴァンスカ(S)、そして巨匠カラヤンの最晩年の芸術には欠かせないアンナ・トモワ=シントウ(S)など、いずれも絶頂期の声が聴けた感動は忘れることはありません。この3名の歌手人生はソフィア国立歌劇場からスタートしました。
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[2002年、サヨナラ公演でライナ・カバイヴァンスカと] 

 2001年、ソフィア国立歌劇場を訪れた時、トモワ=シントウのタイトル・ロールでの「アイーダ」に接しましたが、トランペットのユニゾンに乗って勇壮に歌われる「凱旋の場」の合唱。その圧倒的な迫力は、カラヤンならずとも食指の動くご馳走でした。
 この秋来日する公演目で言えば、「仮面舞踏会」最終場面での舞踏会の客人たちの刺激的な合唱。「トゥーランドット」では北京の民衆の揺れ動く静と動との合唱など、歌劇をドラマティックに盛り上げること必至、ブルガリアン・ボイスの底力をみせてくれることでしょうね。
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[1979年のブルガリアンパーティ。前列:ギャウロフ、トモワ=シントウ、ブルガリア大使]


「仮面舞踏会」の観どころ・聴きどころ
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 私をオペラの世界に引き込んだ演目、個人的にこだわりのあるオペラのひとつですね。1967年イタリア歌劇団の日本公演。舞台映えのするアントニエッタ・ステルラ(S)のアメーリア役、格調高く絶好調のベルゴンツィ(T)。日本のこの舞台で実力開花のマリオ・ザナーシ(B)。見事なトリオでした。
 この劇場の観どころをひとつと言われれば第3幕、妻の不貞を詰るレナートに対し妻として、母として、女として心情を吐露するアメーリアの絡み−、ここは二人の歌役者が必要な場面。前述のステルラとザナーシも絵になっていましたが、マリア・カラス(S)とティト・ゴッビ(B)のCDもモノラル録音ながら一度は聴いておかれるといい。絶品です。1980年頃ロンドンのある音楽事務所でゴッビに会った時(もう舞台からは降りていた)この録音やライブ録音について話し合ったことがあり、“自分も多くのソプラノとこの役を組んだが、カラスとが最高だった”と述懐しています。このコンビの伝説的な「トスカ」もいいですが「仮面」も忘れてはならないですよ。

「トゥーランドット」の観どころ・聴きどころ
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 前述のカラスやステルラの伝で言えば、1960年代から70年代にかけてのこの外題役はビルギット・ニルソン(S)に尽きるでしょう。終幕、リューの死によって高貴な姫の心情にも変化がはじまり、冷たくわがままな姫様から初な乙女に変わってゆく大詰の声の絶妙な変化、難しい見せ場、観どころですね。ニルソンはうまかった!残されたいくつかの録音で味わうことが出来ます。ソフィア・オペラでも2000年来日公演でのゲーナ・ディミトローヴァのタイトル・ロールも定評のある役だけに感動的でしたね。いま評判のテノールの名曲「誰も寝てはならぬ」ももちろん聴きどころですが、オペラは総合芸術、どんな新演出なのかもとても興味深いところです。



posted by Japan Arts at 16:53| コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月18日

各演目の登場人物の心の美しさについて

「トゥーランドット」
トゥーランドット(S)
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氷のような心を持つ姫が、リューの無償の愛に心をつき動かされ、愛の素晴らしさに目覚める。

リュー(S)
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カラフへの無償の愛、ぶれない愛そのひたむきでまっすぐの気持ちが美しく、この作品の主役ほどのインパクトがある。


「仮面舞踏会」
リッカルド(T)
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部下で親友でもあるレナートの妻アメーリアを密かに愛しているが、友情のために愛を諦める。
誤解され殺されても親友を許す、気高い青年総督。

アメーリア(S)
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結婚している身でありながら、他の男性を好きになったという簡単な気持ちではなく、人間的な魅力に惹かれ合い、プラトニックな関係でいる気品ある崇高な人物。
佐藤しのぶさんは、このアメーリア役を、妻となり母となった今だからこそ、表現できる役と語っています。
また、登場人物の心の美しさとは別に、佐藤しのぶさんの舞台姿、立ち居振る舞いは、凛としていて、その堂々とした姿はとても美しいと評判です。

それぞれの物語の中で、登場人物の個性がはっきりとしていますが、それぞれがその思いを貫いたり、悩んだり、感化されている姿が見え、その心の美しさは歌や演技を通して伝わってくることだと思います。

posted by Japan Arts at 15:25| コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月14日

ヨーロッパの歌劇場が一目置く「ソフィア国立歌劇場」の魅力

合唱団のクオリティの高さ 
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ブルガリア随一の歌劇場「ソフィア歌劇場」が排出してきた合唱団のクオリティの高さは、ヨーロッパの音楽家たちの間でも一目置かれているほど。 

晩年のヘルベルト・フォン・カラヤンが、ヴェルディ作曲「レクイエム」をベルリン・フィルと録音しようとしたとき、重要な合唱団は絶対に「ソフィア国立歌劇場」がいい、と譲らなかったといいます。 
その録音は、カラヤン最後の「レクイエム」として、音楽ファンの間で語りつがれています。 
それほど、「ソフィア国立歌劇場」合唱団はクオリティの高さを保ちつづけていて、ブルガリアの情勢がいかなるときでもそのレベルが落ちたことはないと言います。それは奇跡的なこととまで言われています。 


素晴らしいソリストたち
その合唱団が輩出してきた歌手たちは言うまでもなく素晴らしく、「ソフィア国立歌劇場」で活躍し出すと、ウィーン国立歌劇場などでひっぱりだこになっていきます。 
ある評論家は同時期にミラノ・スカラ座と「ソフィア国立歌劇場」を聴き比べて、「ソフィアの方がよかった」と言っていました。
強い声や表現力の必要な、ドラマティックなイタリアものを得意とする歌劇場が自信を持って届けるのが、この「仮面舞踏会」と「トゥーランドット」です。 

具体的にそれぞれの歌手の魅力を挙げていきます。 
・エミール・イワノフ(テノール)
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11日「仮面舞踏会」リッカルドで佐藤しのぶの相手役
ソフィア出身で、今はウィーン国立歌劇場などで活躍中 

・カメン・チャネフ(テノール)
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4日「トゥーランドット」カラフ役
ウィーンでも大注目の歌手。 

・マリアナ・ツヴェトコヴァ(ソプラノ)
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4日「トゥーランドット」トゥーランドット役
ブルガリア一押しのプリマ。今が絶好調のソプラノ。
2002年には新国立劇場「ナクソス島のアリアドネ」に出演し、
日本の聴衆に強いインパクトを残しています。 

 ・エレーナ・バラモヴァ(ソプラノ)
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5日「トゥーランドット」トゥーランドット役
トゥーランドット歌いといえば…の、
ゲーナ・ディミトローヴァの愛弟子。

※写真はクリックすると拡大します。
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2008年08月12日

2大ドラマティック歌手「仮面舞踏会」への期待

チャネフ&ツヴェトコヴァ、ブルガリアの2大ドラマティック歌手による「仮面舞踏会」への期待
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 「仮面舞踏会」はよくできたオペラだ。華やかな舞台と美しい旋律、そしてヴェルディならではの奥行きのある登場人物が、見事なバランスを保って盛り込まれている。音楽の美しさに身を任せるのもいいけれど、それぞれに愛し悩む人間的な存在である主役3人に目を向けると、大人のオペラとしての「仮面舞踏会」の味わいに気づく。
 その「仮面舞踏会」は、だがすぐれた歌手がいなければ成立しないオペラでもある。強く劇的で、人物の心理に切り込める感受性を備え、そしてもちろん美しく張りのある「声」の持ち主が、何としても必要なのだ。
 この秋、ソフィア歌劇場の来日公演で「仮面舞踏会」に出演するカメン・チャネフとマリアナ・ツヴェトコヴァは、大いに期待できる歌い手である。ブルガリアが生んだ若きドラマティック・テノールとして、ウィーンやミュンヘンでも活躍するチャネフは、輝かしく強靭な声と、完璧なテクニックを兼ね備えたまれに見る大器。「仮面舞踏会」のリッカルドは、「何でもできる力を持った王さまのような存在ですが、『愛』を知ることによって葛藤し、変わる。その心理を表現したい」と意気込む。
 これもドラマティック・ソプラノとして名声を得ているツヴェトコヴァにとって、「仮面舞踏会」のアメーリアは十八番。スカラ座をはじめ、ドレスデンやベルリンなど、世界一流の歌劇場で歌っている。安定したドラマティック・ソプラノが払底している現在のオペラ界で、ツヴェトコヴァの存在は貴重だ。
 「仮面舞踏会」のハイライトのひとつは、主役2人の愛の二重唱だろう。不倫とはいえ、ヴェルディがこれほど「愛」を高らかに歌い上げたことはなかった。チャネフとツヴェトコヴァなら、心ゆくまでその「愛」に酔わせてくれるだろう。2人の「声」が宙に舞う瞬間を想像しただけで、今からわくわくしてしまうのである。

文:加藤浩子(音楽評論家)

紹介した二人の出演日は10月8日(水) 19:00
ツヴェトコヴァはアメリア役、チャネフはリッカルド役で登場

posted by Japan Arts at 16:04| コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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